園児バス置き去りを防ぐアイデア
園児バス置き去りを防ぐアイデア
園児バス置き去り事件が続く中,今すぐできる簡単な方法で幼児の車内放置による熱中症死を防げないか考えています。このページでは,同様の方法を考えている人たちへの情報提供を目的に,私たちが考えたアイデアの検討結果を皆さんとシェアしたいと思います。他でもいろいろなところで良案が出ていますので,いずれかの対策がとられて悲惨な事故が繰り返されないようになることを祈っています。
協力:国際基督教大学 岡村研究室
理想とするコンセプト
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保育士の負担をできるだけ増やさずヒューマンエラーを起こさない登園システムやグッズであること。ただし,園がシステムに頼ることで責任の所在があいまいになり余計に怠慢を招くことが無いよう,補助的な役割にとどまる。
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コストがかからず簡単に導入できること(キッズ携帯は端末代や月額使用料がかか車内置き去り防止のためだけに契約するか疑問である。単機能で安いのが良い。)
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異常があった時に知らせること(キッズ携帯はポイントを通過すると親に知らせることが出来るが,毎日チェックするのは親にとって負担である。)
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電波を発しない事本来は熱感知で親に通知するのが一番良いが,電波を発するのは電波法に違反する。携帯会社が車内置き去りに特化した単機能低コストキッズ携帯を発売してくれるのを期待する。※品川区では先駆的に機能を限定したキッズ携帯を子供に無償貸与しているようです。素晴らしい試みだと思います。
アイデア集
検討中や,実現が難しそうなアイデアを含みます。私たちにとっては記録を取る目的がありますが,同じようなことを考えている人たちへの参考になれば幸いです。
熱感知式
防犯ブザー
結論:難しそう
理由:車内で防犯ブザーを鳴らしても外部に音が聞こえない
仕組
バイメタルスイッチと防犯ブザーを使う。バイメタルスイッチは温度が一定以上になるとスイッチをONすることが出来るため,防犯ブザーの配線に直列に接続したうえでピンを抜いておけば,温度が上昇したときに勝手に導通してブザーが鳴る。
メリット
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300円のサーモスタットと百均の防犯ブザーで作れる
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電池が減らない
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簡単なので作り方を公開して各家庭で自作し,子供に持たせることが出来る
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園に負担を強いず,各家庭内で完結する。
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小さいのでお気に入りの人形の中に入れることができる。
デメリット
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降園後に熱いアスファルト(60度位)にカバンを置いて公園で遊ぶと誤作動する。→電子工作ができる人なら,百均のデジタル目覚まし時計を組み合わせて登園後の一定時間だけ動作するようにできるのではないかと考えた(誤作動防止)。また,銀色の塗料を塗って輻射熱を遮断し,ぬいぐるみに入れることでアスファルトからの熱伝導を防げる可能性がある。
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人通りが少ないと気づいてもらえない
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子供がこわがる
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追記:ダイソーの防犯ブザー(110dB)を車内で鳴らしてみた結果,車外には全く音が聞こえないことが分かった。ネットでは140 dBのブザーもある(参考:救急車120dB)ので一応近日中に実験してみる予定。
うちわスイッチ型ナースコール
結論:安全性を考えるとちゃんとした製品化が必要
仕組
バス車内に設置したうちわを引き抜くとナースコール子機のスイッチが入り,園に設置した親機が鳴る。うちわの柄にはリボンがついており,普段は子機の電池と回路の接続部に挟まって回路を遮断しておく。このとき,子機のボタンは常に押した状態にする(回路をはんだで接続してもいいし,ビー玉をテープで押し付けてボタンを押しておけばよい。
メリット
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子供への負担がない(気休め程度かもしれないが涼むこともできる)
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子機スイッチの電池にサーモスタットを直列接続すれば,設定温度(例えば30度)以上でしか作動しないようにできるため,誤作動がほとんどない
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普段は導通しないので電池が減らない
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バス運行中に子供に使わせておけば遊び感覚で使い方を覚える
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園の中で音がなるので誰かが確実に気づく
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冬はうちわのかわりに毛布にすれば冬に低体温症防止になる
デメリット
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園に設置を要望しないといけないので各自で簡単に導入できない
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無線がつながる範囲の制限(例100m)がある
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うちわはギリギリ三歳くらいで使える
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耐久性や動作の保証がない
忘れ物タグ
結論:若干初期費用がかかるが実現可能そう
仕組
園バスに乗る時に忘れ物タグを園児に配り,降車時に回収する。忘れ物タグは運転士のスマホとBluetoothで接続されており,一定距離離れると通知されるため,園児を残して離れると気づく。
メリット
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手を加えずに既存の製品をそのまま使える
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公園での置き去り防止にも使える
デメリット
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一台のスマホに接続できるタグの数に制約がある(例16個)⇒スマホ2台くらい持ってもいいかも
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スマホのBluetoothを常にONにしている必要がある
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子供が紛失しない工夫が必要である
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一つ2千円程度する
パズル
結論:できそうに思えるが現場の意見次第
仕組
園バスに乗る時に簡単なパズルのピースを一人一つ配り,降車時にパズルを完成させる。
メリット
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視覚的に一発で人数把握ができるので数を数えるより簡単
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園児の遊びになるのでスムーズに導入できる
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パズルはおそらくどこの園にもあるので今すぐできる
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パズルの他にブロックなどでも良い。もともとの高さまでブロックが積みあがらなかったら一目でわかる
デメリット
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降車に時間がかかる可能性がある
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乗車中にピースを紛失する可能性がある
降車画像を親とシェア
仕組
降車時の園児の写真または,降りた後の車内動画を親の共通ラインに送信。
メリット
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今あるものでできる
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親にチェックされているという意識が抑止力になる
デメリット
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手間がかかる
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親がチェックしそびれる可能性
熱感知式
ボイスプレーヤー
近日中に試作予定
仕組
グリーティングカードに使用される録音&再生機能付きのモジュール(例えばこんなの)にバイメタルスイッチを直列につなげて使う。設定温度以上になるとスイッチが閉じて録音した声が再生されて子供にクラクションを鳴らすよう促す。
メリット
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親の声で,子供に分かりやすい言葉で語りかけることが出来る(例:○○ちゃん,大丈夫よ。ハンドルの真ん中を沢山押して音を出してね。先生が気づいて助けてくれるよ。)
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例えば,4分しか再生されないため誤作動しても放っておけばよい
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お気に入りのぬいぐるみの中にいれればぬいぐるみがしゃべっているようにみせられる。
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一人暮らしの高齢者にエアコンをつけるよう伝えるという用途にも応用できる(例:おばあちゃん,部屋が暑くなってるよ。クーラー使ってね。)
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各家庭で対策することが出来,登園バス以外でも使える。
デメリット
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動作の保証がない
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冷静にインストラクションに従えるかわからない
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登園時間以外での誤作動を防止する必要がある⇒対策は熱感知式防犯ブザーと同様
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基盤をいじらなければ例えば4分で再生が終了する→不安にさせないために,事前に子供にインストラクションを聞かせて一定時間で再生が終了することを知らせておくほか,試しにインストラクションに従ってクラクションを鳴らす練習をしておくとより安心。
いただいた意見
バス土足禁止というのはどうか?という問い合わせをいただきました。ありがとうございます。とてもいいアイデアだと思います。しかし,3歳児位ですと靴の脱ぎ履きは時間がかかるので降車に時間がかかります。乗車時に登園カバンを預けて,降車の時受け取る,という方が現実的かと思います。降車時に園児が自分でカバンを探せるよう目印をつける必要があるかもしれません。乗車時は親が確認できますが,降車の時は分かりません。疑いすぎかもしれませんが,面倒くさかったり,普段運転しない人がやり方を知らずにいっぺんにカバンを運び出したりする可能性もゼロではないかと思います。思いがけない穴があることを想定して2重3重に対策できるよう,いろいろな案を出しておくのが良いのではないかと思っています。
連絡先
北里大学一般教育部 物理学単位 川上言美
神奈川県相模原市南区北里1-15-1
042-778-8055
協力
国際基督教大学 アーツサイエンス学科 岡村秀樹 教授